「勢いで『辞めます』と言ってしまったが、やっぱり後悔している…」 「将来の不安から、今の会社に残りたい」
そんな焦りと不安を抱えるあなたへ。結論から言えば、退職の撤回は、正しい手順を踏めば十分に可能です。
実は、人手不足が加速する今、企業側も「退職の再考」を歓迎する傾向にあります。「恥ずかしい」「気まずい」と諦める必要はありません。
この記事では、「法的に撤回可能なタイミング」や、上司が納得する「そのまま使える説得例文」、そして職場復帰後の「気まずさを一瞬で消す立ち回り術」までを完全解説します。
「もう手遅れかも」と落ち込む前に、まずは一読してください。
- 「退職願」なら承認前、「退職届」でも受理前なら法的に撤回できる判断基準
- 上司が納得し応援してくれる「謝罪と残留希望」の具体的な会話例文
- 出社初日の「気まずさ」を一瞬で払拭する挨拶と立ち回りのテクニック
- 2025年の人手不足を背景に、企業が「撤回」を歓迎する市場のリアル
退職撤回が間に合うかどうかの見極めポイント

まずは焦る気持ちを少しだけ落ち着けて、今の状況を一緒に整理していきましょう。退職をなかったことにできるかどうかは、実はあなたの気合や根性ではなく、出した書類の種類と、その書類が今どこにあるかという2つのポイントだけで決まります。
ここを確認するだけで、これからあなたがどう動けばいいのかがハッキリ見えてくるはずです。
退職願と退職届は全然ちがう!どっちを出したかで決まる運命の分かれ道
多くの人が同じようなものだと思っていますが、退職願と退職届は意味がまったく違います。この違いを知っておくだけで、気持ちがだいぶ楽になるかもしれません。
それぞれの特徴を表にまとめましたので、あなたが会社に出したのはどちらだったか、思い出しながら見てみてください。
| 特徴 | 退職願(たいしょくねがい) | 退職届(たいしょくとどけ) |
| これってどういう意味? | 会社に対して「辞めさせてもらえませんか?」と相談やお願いをするためのもの | 会社に対して「私は辞めます」と自分の決定を一方的に伝えるためのもの |
| いつ辞めることが決まる? | 会社側が「いいですよ」と承諾してくれたときにはじめて決まります | あなたが会社に出して、それが相手に届いた瞬間に辞めるカウントダウンが始まります |
| 取り消しやすさは? | とても簡単です。会社がOKを出す前なら、あなたの自由に取り下げることができます | 難易度は上がります。基本的には会社の同意がないと取り消せません |
| イメージで言うと | 「別れたいと思ってるんだけど、どうかな?」という話し合いの提案 | 「もう別れます。さようなら」という決定事項の通知 |
パターンA:あなたが「退職願」を出していた場合(または口頭で相談しただけの場合)
この場合は、かなり高い確率で退職を撤回できるので安心してください。
退職願というのは、あくまでお願いベースの書類です。つまり、まだ話し合いのボールは投げられただけで、キャッチボールは終わっていません。法律の考え方でも、会社の中で人事権を持っている偉い人が「わかった、君の退職を認めよう」と承諾する前であれば、あなたは自分の都合だけで一方的にやっぱりやめますと言う権利を持っています。
よくあるのが、直属の上司に渡して「とりあえず預かっておくよ」と言われているパターンです。この状態なら、まだ会社としての正式な決定は何も下されていません。上司の机の引き出しにしまわれているだけであれば、すぐに「返してください」と言えば間に合います。
まだ正式決定していないのですから、恥ずかしがる必要はありません。すぐに上司に連絡をとって、気持ちが変わったことを伝えましょう。
パターンB:あなたが「退職届」を出してしまっていた場合
こちらは退職願に比べると少しだけハードルが上がります。退職届というのは、出した時点で強い効力を持ってしまうからです。
ただ、絶対に無理かというとそうではありません。ここであきらめるのはまだ早いです。
たとえ退職届という名前の書類であっても、会社の人事担当者が手続きを始めていなかったり、社長の決裁印が押されていなかったりすれば、話し合いで解決できるチャンスは十分にあります。
会社という組織は意外と手続きに時間がかかるものです。あなたが上司に渡してから、それが人事部に届き、処理されるまでにはタイムラグがあります。この手続きが終わる前であれば、上司と話し合って、お互いの合意という形でなかったことにできるケースがたくさんあるのです。
大切なのは、あきらめずに1秒でも早く動くことです。手続きが進んでしまう前に、まずは上司に相談の時間をもらいましょう。

法的に「撤回」が認められるギリギリのラインはどこ?
「上司には伝えてしまった……」と落ち込んでいるあなたへ。法的には「どの瞬間」までなら引き返せるのか、判例と法律の観点から正確に知っておきましょう。ここを知っているだけで、上司との交渉力が格段に上がります。
キーワードは「人事権を持つ人の承諾」
過去の裁判例(最高裁判決など)を見ると、退職の意思表示が確定するのは、直属の上司が聞いた時ではなく、「人事権を持つ人(社長や人事部長など、採用・解約の決定権を持つ人)が承諾した時点」とされることが一般的です。
つまり、以下のような状況であれば、まだセーフ(撤回可能)である可能性が高いのです。
- 直属の課長には話したが、課長が「部長にはまだ話していない」と言っている。
- ⇨ セーフです。 課長には決定権がない場合が多いため、まだ会社としての承諾は成立していません。
- 退職届を出したが、人事部から正式な書類や連絡が来ていない。
- ⇨ 交渉の余地大です。 手続きが完了していなければ、会社としても「なかったこと」にする方がコストがかからないからです。
- 「退職日は決まったが、後任が決まっていない」
- ⇨ 法的にはアウトでも、実務的にはセーフです。 会社にとって「後任を探すコスト」が浮くため、喜んで撤回に応じる可能性があります。
法律(民法627条)を味方につける
民法第627条では、以下のように定められています。
「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」
これだけ読むと「2週間で辞められる=辞めることが確定する」と見えますが、逆の視点も重要です。「合意解約(会社と話し合って辞めること)」の場合、合意が成立するまでは契約は有効なのです。
もし上司に「もう退職届は受理したから撤回は無理だ」と言われたとしても、それが脅し文句である可能性を疑ってください。「受理」とは、単に書類を受け取ったことではありません。「会社として正式に退職を認め、辞令などの手続きを完了させる意思決定をしたこと」を指します。
まだ離職票の発行手続きや社内公表が行われていないなら、「実はまだ受理プロセスは完了していない」のが実情です。食い下がる価値は十分にあります。
もし「退職代行」を使っていた場合は?
最近増えている「退職代行サービス」を使って意思表示をした後の撤回は、少し特殊です。
代行業者を通じて伝えた場合でも、会社が「承諾」の連絡を代行業者に返す前であれば、ご自身で会社に連絡して撤回することは可能です。ただし、代行業者との契約料は戻ってこないでしょう。それでも、キャリアを失うリスクに比べれば安い授業料と言えます。
会社が「辞めないで」と本気で思う裏事情

一度自分から辞めますと言ってしまった以上、もう会社にとって自分はいらない人間なんじゃないか。そんなふうに思って落ち込んでいませんか。それは大きな誤解かもしれませんよ。今の日本の労働環境は働く側にとってこれ以上ないくらいの追い風が吹いているんです。あなたが思っている以上に会社はあなたに戻ってきてほしいと願っています。
人が足りなさすぎる!新しい人を雇うのは本当にお金がかかる
会社の本音をお話ししますと、今はとにかく人が足りていません。
ニュースなどで2025年問題という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、働き手がどんどん減ってきているのが今の日本の現実です。どの会社も、若手や中堅社員に辞められるのが一番怖いと思っています。
社長や人事担当者の気持ちになって、電卓を叩いてみましょう。もしあなたが辞めてしまったあと、代わりの人を雇うのにどれくらいのお金と手間がかかるか知っていますか。
実は、あなたが思っている以上に会社にとっては大きな出費になります。
採用にかかるお金のリアル
求人サイトや紹介会社を使うと、だいたい年収の3割以上が手数料として消えていきます。
| あなたの年収 | 会社が支払う採用コスト |
| 400万円の場合 | 120万円 〜 140万円 |
あなたが辞めずに残るだけで、会社はこの100万円以上を払わなくて済むのです。
お金だけじゃない、見えない負担
新しい人を雇う大変さは、お金だけではありません。社員たちの時間もこれだけ奪われてしまいます。
- 面接の対応忙しい社員たちが時間を割いて、何人もの面接をしなければなりません。
- 教育の手間入社したあとも、仕事のやり方をイチから教える必要があります。
- ひとり立ちまでの給料新人が仕事を覚えて一人前になるまでの半年間、会社は戦力にならない期間も給料を払い続けます。
こうして計算してみると、あなたがやっぱり残りますと言ってくれることが、会社にとってどれだけありがたいことか分かりますよね。
気まずいなんて思う必要はありません。経営者たちは心の中で、ラッキー、採用コストが浮いたぞとガッツポーズをしているのが本音なのです。

他と比較した結果、「やっぱりここが良い」という言葉は最強の武器になる
一度辞めようとしたことを、マイナスに捉える必要はありません。むしろ、その迷いはこれからの信頼を作る大きな武器になります。
なぜなら、なにも知らずにただ長く働いている人よりも、「外の世界と比較したうえで、あえて今の会社を選び直した人」のほうが、会社に対する納得感や愛着が深くなるからです。
上司や経営者にとって、部下から言われて嬉しいのはこんな言葉です。

転職活動をしてみたけれど、うちの会社の環境の良さに改めて気づきました



他社と比べてみて、このチームで働くことが一番だと確信しました
これはただのワガママではなく、「他社と比較検討した結果の再決断」です。
「なんとなく残っている」のではなく、「ここがいいから残る」と決めた社員は、これから先も迷わずに強い気持ちで働いてくれるだろう。会社側もそんなふうに前向きな期待をしてくれます。
だからこそ、迷ったことを恥じる必要はありません。「一周まわって、やっぱりこの会社が好きです」と自信を持って伝えてください。それは会社に対する最高の褒め言葉になります。
撤回を決意したら、絶対にやってはいけない「3つのNG行動」
「やっぱり残ります」と伝える決心がついたとしても、その伝え方や行動をひとつ間違えるだけで、全てが台無しになってしまうことがあります。
会社の人たちに「残ってくれてよかった」と心から思ってもらうために、絶対にやってはいけない3つのNG行動について説明します。
NG行動①:SNSで「会社辞めるのやめた(笑)」と投稿する
たとえ鍵付きのアカウントであっても絶対にやめましょう。
SNSはどこで誰が見ているかわかりません。もし会社の人が見つけてしまったら、どう思うでしょうか。
あいつは会社を辞めるかどうかの大事な決断を、ネタのように扱っているのか 周りがどれだけ心配したと思っているんだ
こんなふうに思われてしまったら、一度失った信用を取り戻すのは本当に難しくなります。撤回が無事に終わって完全に元の生活に戻るまでは、SNSでの発言は慎重すぎるくらいでちょうどいいのです。
NG行動②:上司より先に、仲の良い同僚に相談してしまう
悩み事は話しやすい同僚に相談したくなるものですが、この場面ではぐっと我慢が必要です。
職場の噂話というのは、あなたが思っているよりもずっと早く広まります。しかも、人から人へ伝わっていくうちに話の内容が変わってしまうこともよくあるのです。
もしあなたが上司に伝える前に、「あいつ、なんか辞めるのをやめるらしいよ」という噂が上司の耳に入ってしまったら大変です。上司としては、自分を差し置いて周りが知っているという状況は面白くありません。
上司の顔を立てるためにも、この大事な話は必ず直属の上司に一番最初に伝えてください。順番を守るだけで、上司はあなたの味方になってくれやすくなります。
NG行動③:メールやLINEだけで済ませようとする
直接会って「やっぱり残りたい」と言うのは、とても勇気がいりますよね。できれば顔を合わせずに、LINEやメール一本で済ませてしまいたい気持ちもわかります。
でも、文字だけの連絡は絶対に避けてください。
文字だけだと、あなたの「本当にここで頑張りたい」という熱意や申し訳ないという気持ちが伝わりにくいからです。受け取った上司も、「こんな大事なことをメールで済ませるなんて失礼だな」と感じてしまうかもしれません。
また、メールだと相手が見落としてしまったり、返信が遅れたりして、その間に退職の手続きが進んでしまうリスクもあります。
アポイントを取るためにメールを使うのはOKですが、肝心な撤回の話は、必ず直接会って話すか、難しければ電話やビデオ通話を使って、自分の声と表情で伝えるようにしましょう。その誠実さが、成功への一番の近道になります。
成功率を劇的に上げる「伝え方」の極意


上司にどうやって話を切り出せばいいのか、悩んでしまいますよね。いきなり「話があります」と詰め寄ると、相手も身構えてしまいます。上司に嫌な顔をされずに、スムーズに話を聞いてもらうための準備と実際に使えるセリフを紹介します。
上司への切り出し方は?まずはメールで時間を予約しよう
撤回の話をするときに一番大切なのは、相手の都合を考えることです。上司も自分の仕事で忙しいので、いきなりデスクに行って「今いいですか」と話しかけるのはおすすめできません。
急に重い話をされると、上司も心の準備ができていないので、「今は忙しいから」と断られたり、感情的に「もう決まったことだから」と突っぱねられたりしてしまうかもしれません。
まずはメールやチャットを使って、「相談したいことがあるので、時間をください」と予約を入れるのが大人のマナーです。ワンクッション置くことで、上司も「なにか大事な話があるんだな」と心づもりができるので、落ち着いて話を聞いてくれるようになります。
メールを送るときのポイント
件名は重苦しくしない 「退職の件で重要なお話があります」なんて書くと、上司もドキッとして警戒してしまいます。「退職の件でご相談」くらいシンプルに書きましょう。
メールで全部言わない メールの文章で「やっぱり辞めるのをやめます」と書いてはいけません。文字だけだと本気度が伝わりにくいですし、軽い気持ちだと思われてしまうからです。あくまで「直接お話ししたい」と伝えるだけにしましょう。
そのまま使えるアポ取りメールの例文
件名:退職の件についてのご相談(氏名)
〇〇課長 お疲れ様です、〇〇です。
先日お伝えした退職の件につきまして、私自身の考えに変化があり、改めて直接ご相談のお時間をいただけないでしょうか。
ご多忙中大変恐縮ですが、本日または明日のご都合の良い時間に、10分ほどお時間をいただけますと幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
アポイントを取るときは「対面」が基本!一番気持ちが伝わる方法を選ぼう
上司に「お時間をください」とメールを送るとき、どの方法で話したいと伝えるべきでしょうか。
上司から「忙しいから電話でいい?」「このチャットで教えて」と言われることもあるかもしれませんが、そこは「大事な話なので」と食い下がってでも、直接顔が見える対面を選ぶべきです。
どの方法が一番成功しやすいか、ランキング形式でまとめました。アポイントのメールを送る前に確認しておきましょう。
| おすすめ度 | 方法 | 特徴とポイント |
| 第1位 | 直接会う(対面) | 【基本はこれ!】 会議室などの静かな場所を予約してもらいましょう。あなたの申し訳なさそうな表情や、「残りたい」という真剣な眼差しは、言葉以上に上司の心を動かします。 |
| 第2位 | ビデオ通話 | 【どうしても会えない時】 リモートワーク中などで出社が難しい場合は、Zoomなどのビデオ通話でも大丈夫です。ただし、必ずカメラをオンにして、お互いの顔が見える状態で話してください。 |
| 第3位 | 電話 | 【最終手段】 ネット環境もなく、どうしても会えない場合のギリギリの選択肢です。顔が見えない分、声のトーンを落として、真剣さが伝わるように話す工夫が必要です。 |
これだけは絶対にダメ!「LINEやメール」だけで済ませること
一番やってはいけないのが、「気まずいから」といって、アポイントのメールやLINEの文章の中で「やっぱり辞めるのをやめます」と伝えて完結させようとすることです。
- 「大事なことをメール一通で済ませるなんて無責任だ」と怒らせてしまう
- 本気度が伝わらず、「ふざけるな」とそのまま退職の手続きを進められてしまう
こんなリスクしかありません。
メールはあくまで「時間を予約するため」の道具です。肝心の撤回の話は、必ず自分の口で伝えてください。
【状況別】そのまま読むだけ!上司が納得する魔法のセリフ集
いざ上司と向かい合うと、緊張して頭が真っ白になってしまうかもしれません。でも大丈夫です。話す順番さえ間違えなければ、あなたの気持ちはちゃんと伝わります。
基本の流れはこれだけです。
- 謝る(ご迷惑をおかけしました)
- 理由を言う(前向きな理由で)
- お願いする(残らせてください)
言い訳っぽくならず、素直な気持ちが伝わる例文を用意しました。あなたの状況に合わせて、そのまま読んでみてください。
パターンA:勢いで「辞める」と言ってしまい後悔している場合
これは一番多いパターンです。変に取り繕うよりも、正直に「感情的になってしまった」と認めるほうが、上司も「それなら仕方ないな」と許しやすくなります。



〇〇課長、お忙しい中お時間をいただきありがとうございます。 実は、先日申し上げた退職の件について、撤回をお願いしたくお話しさせていただきました。あの時は、今の業務への行き詰まりや不安から、一時的な感情で辞めるという結論を出してしまいました。
でも、この数日間、冷静になって自分のキャリアを深く見つめ直しました。 その結果、私が本当にやりたいことは、まだこの会社にあると気づきました。同僚やお客様との関係を断ち切ってまで離れるべきではないと、強く感じています。
ご迷惑をおかけし、大変お恥ずかしい限りですが、もし許されるなら、退職願を取り下げさせていただき、改めてこのチームで貢献させていただけないでしょうか。
パターンB:他の会社に行こうとしたけど、今の会社の良さに気づいた場合
ほかの会社と比較したうえで戻るというのは、実はとても説得力があります。「よそよりウチのほうがいい」と言われて悪い気をする上司はいません。



実は退職を申し出た後、自分の市場価値や他社の環境について情報を整理しておりました。 でも、外の世界と比較すればするほど、弊社の環境の良さや、任せていただいている仕事のやりがいに改めて気づかされました。
隣の芝生が青く見えていただけだと痛感し、今は「この会社でさらに成長したい」という気持ちが確固たるものになっています。 お騒がせして本当に申し訳ありません。退職の意思を撤回し、今後は迷いなく業務に邁進したいと考えています。
パターンC:上司に引き止められて心が動いた場合
上司の顔を立てる、最強のパターンです。「課長のおかげで目が覚めました」と伝えることで、上司はあなたのことを全力で守ってくれるようになります。



先日、課長から「今のチームには君が必要だ」というお言葉をいただき、あの後ずっと考えておりました。 正直、自分は評価されていないと思い込んでいたのですが、課長のお言葉で目が覚めました。期待していただけているのであれば、その期待に応えることこそが私の進むべき道だと思いました。
自分の未熟さゆえにご心配をおかけしましたが、退職の意思を撤回させていただきたいです。これからは今まで以上に成果でお返しできるよう頑張ります。
もしも「もう遅い」と言われたら? プロの切り返し術
もちろん、すべてがスムーズにいくとは限りません。上司から難色を示された場合の「食い下がり方」も用意しておきましょう。
ケース1:「もう人事部に出しちゃったよ」と言われたら



ご迷惑をおかけして申し訳ありません。ただ、私としてはどうしてもこの会社で働き続けたいという思いが強く、諦めきれません。 人事部の方に私から直接謝罪と説明に行かせていただけないでしょうか? もしくは、課長から『本人が強く希望している』と一本お電話を入れていただくことは難しいでしょうか? 何卒、お力添えをお願いいたします。
【ポイント】 人事部での処理が「完了」していなければ、ストップは可能です。上司を「味方」につけて、一緒に人事を説得してもらう構図を作りましょう。
ケース2:「もう後任を探し始めている」と言われたら



ご調整を進めていただいている中で、本当に申し訳ありません。 ただ、もしこれから採用活動を本格化されるのであれば、新しい方を採用・育成するコストや時間を、今後は私のさらなる成長への投資として見ていただけないでしょうか? 業務内容はすべて把握しておりますので、明日から即戦力として、これまで以上のパフォーマンスでお返しすることをお約束します。
【ポイント】 「新しい人を採るより、反省してやる気になっている自分を再利用したほうがコスパがいいですよ」という合理的メリットを提示します。
ケース3:「一度辞めると言った人を信用できない」と言われたら



おっしゃる通りだと思います。一度失った信用を取り戻すのが簡単ではないことは理解しています。 ですが、今回の件で自分の仕事への姿勢を根本から見直しました。言葉だけでなく、これからの行動と成果で『残してよかった』と思っていただけるよう、死に物狂いで取り組みます。どうか、チャンスをいただけないでしょうか。
【ポイント】 ここは反論せず、全面的に認めた上で「未来の行動」を約束するしかありません。熱意で押し切る場面です。
口約束だけでは危険!「言った言わない」を防ぐためにメールで証拠を残そう
上司と話がついて、無事に退職を撤回できることになっても、まだ安心するのは早いです。
口約束だけで終わらせてしまうと、あとでやっぱりダメだったと言われたり、人事課への連絡が漏れていて退職手続きが進んでしまったりするトラブルが起こりかねません。
自分の身を守るための最後の仕上げと、翌日から気持ちよく働くためのコツについて解説します。
トラブル回避!退職撤回の証拠を残すためのメール術
上司から口頭でわかったと言ってもらえたら、その日のうちに必ずお礼のメールを送っておきましょう。これは単なるお礼ではありません。メールという形で履歴を残すことで、お互いに合意しましたよねという動かぬ証拠を作るためです。わざわざ堅苦しい書類を作らなくても、メール一本で十分な効力があります。
そのまま使えるお礼メールの例文
件名:本日の面談の御礼と退職撤回につきまして(氏名)
〇〇課長
本日はお忙しい中、面談のお時間をいただきありがとうございました。
本日の面談にて、先日提出いたしました退職願の撤回をご承認いただき、心より感謝申し上げます。
〇〇課長からの温かいお言葉を受け、改めて身の引き締まる思いです。
ご迷惑をおかけした分、今後はより一層業務に励み、チームに貢献できるよう尽力いたします。
引き続き、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
(氏名)
このメールに対して上司から「よろしく頼むよ」などの返信が来れば完璧です。それが合意解除の強力な証拠になります。
撤回が決まった翌日が勝負!気まずい空気を一瞬で変える挨拶のコツ
上司と話がついて撤回が決まったあと、一番気がかりなのは翌日の職場の空気ですよね。
あなたは毎日出社しているので周りの様子はわかっていますが、周りの人たちは「あの人、もうすぐ辞めるんだよね」という目で見ています。
そこで急に「やっぱり辞めません」となるので、どうしても最初は戸惑いの空気が流れます。
この空気を引きずらないためには、あなた自身の態度を切り替えることが大切です。オドオドせずに今日からまた仲間の1人としてやっていくんだという姿勢を見せましょう。
挨拶の正解は「ごめんなさい」ではなく「これからもよろしく」
撤回が決まった直後、関係者やチームメンバーに伝えるときの言葉選びで、その後の働きやすさが決まります。
このとき、ひたすら謝るのは逆効果です。暗い顔で「お騒がせしてすみません」とだけ言われると、相手も「あ、うん…(なんて返せばいいんだろう)」と反応に困ってしまいます。
おすすめなのは、これからも一緒に働ける喜びと感謝を伝えることです。
| あなたの挨拶 | 周囲の反応 | |
| ダメな挨拶 | 「あの…いろいろご迷惑おかけして…本当にすみません…(小声)」 | 「あ、そう…(気まずいな)」 会話がそこで終わってしまう |
| 良い挨拶 | 「お騒がせしました!いろいろ悩みましたが、引き続きこちらで頑張ることになりました。また皆さんと一緒に仕事ができて嬉しいです!」 | 「そうなんだ!よかったじゃん」 「またよろしくね」 明るく受け入れられる |
なぜ「ありがとう」「嬉しい」のほうがいい?
人は謝られると、許すか許さないかの判断を迫られて心理的な負担を感じます。でも「また一緒に働けて嬉しいです」と言われると、単純に悪い気はしません。
これからは「辞めていく人」ではなく「一緒に戦う仲間」に戻るわけですから、前向きな言葉で再スタートを切りましょう。
ヒソヒソ話や「あれ?」という顔をされたときの対処法
もし誰かがヒソヒソ話をしていたり、「あれ、辞めるんじゃなかったの?」という不思議そうな顔をしてきたりしても、気に病む必要はありません。
それはあなたのことが嫌いだからではなく、単なる情報のタイムラグや戸惑いです。「送別会の準備しようとしてたけど、どうなったのかな?」と困っているだけかもしれません。
周りが戸惑っているときにあなたがオドオドしていると、余計に腫れ物扱いされてしまいます。
「いろいろありましたが、心機一転がんばります!」と明るく宣言して、あとは普段どおりに仕事をしてください。あなたが堂々としていれば、「なんだ、今まで通りでいいのか」と周りも安心します。数日もすれば、その景色が当たり前の日常に戻りますよ。
信頼を最速で取り戻すために最初の1ヶ月でやるべき3つの行動
退職を取り消したあと、周りの人たちはあなたのことをよく見ています。口では頑張りますと言っていても、本当かなと半信半疑なのが正直なところでしょう。辞めようとした人というレッテルを剥がして、やっぱり頼りになる仲間だと思ってもらうためには言葉よりも行動で示すのが一番です。最初の1ヶ月間だけでいいので次の3つのことを徹底してやってみてください。これだけで周りの評価は驚くほど変わります。
その1:誰よりも早く小さな結果を出してアピールする
信頼を取り戻すのにいきなり大きなプロジェクトを成功させる必要はありません。それよりも効果的なのは毎日の当たり前の仕事を誰よりも早く終わらせることです。今まで通りのペースで仕事をしていてはダメです。あの人は気持ちを入れ替えたんだなと周りに感じさせるにはスピードが一番わかりやすい指標になります。
具体的にはこんなことを意識してみてください。
- メールの返信は見てから5分以内に返す
- 頼まれた資料作成は締め切りの前日までに提出する
- 朝は始業時間の10分前には席について準備する
仕事が早いとそれだけでやる気があるように見えます。こまめなスピード対応を積み重ねることで、やっぱり残ってくれて助かったと周りの人に思わせることができますよ。
その2:みんなが嫌がる雑用こそ笑顔で引き受ける
電話対応やコピー用紙の補充、共有スペースの片付けなど誰もがちょっと面倒だなと思う仕事ってありますよね。こういう雑用こそあなたが進んで引き受けるチャンスです。辞めようとした人がみんなが嫌がる仕事を率先してやっている姿を見ると、周りの人は口だけじゃなくて本当にチームのために動こうとしているんだな、このチームでやり直す覚悟があるんだなと感じてくれます。
- 電話が鳴ったら一番に受話器を取る
- 郵便物や荷物の受け取りを代わる
- 会議室のホワイトボードをきれいに消す
- ゴミ箱がいっぱいになっていたら捨てに行く
小さなことですがこういう姿は必ず誰かが見てくれています。これが信頼を取り戻すための一番の近道です。
その3:会社の悪口や愚痴は絶対に言わないと誓う
これが3つの中で一番重要で一番気をつけなければいけないことです。普通の社員がうちの会社給料安いよねと愚痴を言ってもそれはただの世間話で終わります。でも一度辞めようとしたあなたが同じことを言うと周りの受け取り方はまったく変わってしまいます。



まだ辞めたいと思ってるのかな



文句があるならやっぱり辞めればよかったのに
こんなふうに通常の何倍もネガティブに受け取られてしまうのです。一度崩れた信頼を回復している最中に不満を口にするのは命取りになります。これからの数ヶ月間はランチタイムや飲み会の席であってもネガティブな発言は一切封印しましょう。もし周りが悪口で盛り上がっていても一緒になって同調するのは避けてください。ポジティブな話題で返すくらいの心がけが大切です。
もう二度と「辞めたい」で悩まないために!長く働き続けるための心の守り方
無事に退職を取り消せてホッとしているかもしれません。でも何も変えずにそのまま働き始めると、また数ヶ月後に「やっぱり辞めたいかも」と同じ壁にぶつかってしまう可能性があります。
せっかく勇気を出して残ると決めたのですから、今回の経験を無駄にしないようにしましょう。これからは長く気持ちよく働くための工夫を一緒に考えていきます。
「辞めたい理由」ごとの対処法で、もう二度と悩まない働き方へ
あなたが今回、退職届を書こうと思った本当の理由は何だったのでしょうか。
人間関係がつらかった、仕事が多すぎてパンクしそうだったなど、その原因は人それぞれです。
冷静になった今だからこそ、その原因と向き合ってみましょう。理由がはっきりしていれば、次に同じようなモヤモヤを感じたとき、感情が爆発する前に上手に対処できるようになります。
よくある原因とその解決策を表にまとめました。自分のケースに当てはめてみてください。
| 辞めたくなった原因 | 明日からできる具体的な解決策 |
| 人間関係が原因だった場合 | 物理的な距離を取るのが一番です 苦手な人とは席を離してもらう、なるべく関わらないようにするなどの工夫をしましょう。 どうしてもつらいときは我慢せず上司に相談して、担当やチームを変えてもらうのもひとつの手です。 |
| 仕事の量が多すぎた場合 | 断る勇気を持ちましょう キャパオーバーになる前に「これ以上は無理です」と伝える練習をしてください。 また、便利なツールを使って作業時間を短くできないか、チーム全体で相談してみるのもおすすめです。 |
| 給料や評価が不満だった場合 | ゴールを明確にしましょう 上司との面談で「何をどれくらい頑張れば給料が上がるのか」を具体的に聞いてみてください。 目指すべき数字や目標がはっきりすれば、やらされている感が消えてやる気に変わります。 |
心のガス抜きを忘れないで
不満というのは風船に入った空気と同じです。我慢してため込みすぎると、いつかパンパンになって爆発してしまいます。
そうなる前に、少しずつ空気を抜く方法を見つけておくことが大切です。
- 休みの日は完全に仕事のことを忘れる
- 信頼できる友達に愚痴を聞いてもらう
- 趣味に没頭する時間を作る
こんなふうに、意識してガス抜きをするだけでも、長く働き続けるためのスタミナが全然違ってきますよ。
「いつでも辞められる自分」になると、逆に会社が好きになる
半年に一回くらい、自分を見つめ直す時間を作ってみてください。「この半年で何ができるようになったかな」「これからどんな仕事をしていきたいかな」と、自分の成長を確認するだけで十分です。不思議なことですが、いつでも転職できるだけの実力をつけておくと、逆に今の会社で働くのが楽になります。


この心の余裕こそが、長く安心して働き続けるための最強の精神安定剤になるのです。会社に依存するのではなく、自分で選んでここにいるという状態こそが、健全なキャリアの姿です。
まとめ:あなたの「迷い」は「覚悟」に変わった
長くなりましたが、最後に改めてお伝えします。
退職を撤回することは、決して「逃げ」でも「恥」でもありません。
一度は「辞める」という大きな決断をし、外の世界を見ようとした。 その上で、悩み抜いて「やっぱりここがいい」と戻ってきた。 そのプロセスを経たあなたは、なんとなく働いている他の社員よりも、ずっと深く会社のこと、自分のこと、仲間のことを考えているはずです。
その「迷い」は、今、確固たる「覚悟」に変わりました。
「雨降って地固まる」という言葉の通り、一度ヒビが入った関係も修復の過程でより強固なものになります。 あなたが勇気を出して伝えた「やっぱりここで働きたい」という言葉はきっと上司や同僚の胸に響いています。
まずは深呼吸して、上司へのアポ取りメールを送ることから始めましょう。 あなたの再スタートを、心から応援しています。
【Q&A】退職撤回に関する「こんな時どうする?」よくある質問
ここまで退職撤回の基本ルールと伝え方を解説してきましたが、「自分のケースは特殊だから……」とまだ不安が残っている方もいるかもしれません。 ここでは、実際に多くの相談が寄せられる「具体的で少し言い出しにくい悩み」をまとめました。
- 試用期間中でも退職の撤回はできますか?
-
試用期間中であっても、労働契約は成立していますので、撤回のルールは正社員と同じです。 むしろ、会社側としては「まだ教育コストをかけきっていない」「現場の業務に深い穴が開いていない」段階であるため、ベテラン社員よりもダメージが少なく、すんなり受け入れられることが多いです。「早とちりしてしまいましたが、ここで頑張りたいです」と素直に伝えれば、若気の至りとして許容されやすいでしょう。
- 退職を撤回したいけど、上司にどう切り出せばいいですか?
-
まずは「退職の件でご相談したいことがあります」と丁寧に切り出しましょう。いきなり撤回を伝えるより、感謝と謝罪を先に伝えることで印象が良くなります。たとえば「退職の意思をお伝えしましたが、もう一度考え直したいと思いまして」と穏やかに話すのがおすすめです。
- 退職撤回を申し出たあと、職場が気まずいです。どうすればいい?
-
気まずさを完全に消すのは難しいですが、誠実な姿勢を続けていれば自然と空気は変わります。まずは「迷惑をかけてしまい申し訳ありません」と一言伝え、感謝を添えることが大切です。その後は、日々の仕事で信頼を取り戻す行動を積み重ねていきましょう。
- 退職撤回が認められませんでした。もう諦めるしかない?
-
撤回が難しくても、完全に道が閉ざされるわけではありません。再入社や別部署での再スタートなど、柔軟な選択肢はあります。落ち着いて「今後も会社に貢献したい」という意思を伝えることで、新しい形で戻れるケースも多いです。自分を責めず、次の一歩を前向きに考えましょう。
- 送別会が開かれた後や、餞別をもらった後でも撤回できますか?
-
可能です。ただし、精神的なハードルは最も高くなります。 法的には送別会の有無は関係ありませんが、同僚の感情としては「えっ、あんなに送り出したのに?」となるのは避けられません。 この場合、いただいた餞別は「お気持ちだけいただきます」と丁重にお返しするか、菓子折り(挨拶の品)を持参して「皆様のお気遣いに感動し、やはりここで働きたいと思いました」と、送別会を「会社への愛着を再確認したきっかけ」として話すのが高等テクニックです。数週間の気まずさは、高い勉強代だと思って割り切りましょう。
- パート・アルバイトでも退職撤回はできますか?
-
パート・アルバイトの人手不足は正社員以上に深刻です。店長やマネージャーからすれば、シフトの穴埋めや新規採用の手間がなくなるため、諸手を挙げて歓迎してくれるケースがほとんどです。「来月のシフト、まだ間に合いますか?」と明るく聞いてみましょう。
- 撤回したことで、ボーナスや人事評価に響きませんか?
-
短期的には影響する可能性がありますが、長期的に見れば挽回可能です。 退職騒動によって業務に支障が出たり、周囲を混乱させた場合、その期の評価(情意評価など)が下がることは覚悟しておくべきです。 しかし、それはあくまで「一時的なペナルティ」です。撤回後にあなたが誠実に働き、成果を出せば、1〜2年で信頼も評価も必ずフラットに戻ります。「一度下がった評価を倍にして取り返す」という気概を持って仕事に取り組みましょう。
- 「退職」は撤回したいですが、今の部署にはいたくありません。異動願いとセットで交渉できますか?
-
「会社は好きだが、この部署の環境だけが無理だった」という場合、人事部にその旨を正直に相談するのはアリです。会社としても「退職されるよりは、別部署で活躍してもらったほうがいい」と判断するケースが増えています。 ただし、「わがままだ」と捉えられないよう、「今の部署では力が発揮しきれなかったが、〇〇部であれば過去の経験を活かして貢献できる」と、会社にとってのメリットを強調してプレゼンしましょう。









